アンケートは様々な場面で有効活用されていると思うが、特に、「年齢」などの数量回答や、「男性・女性」、「満足度の5段階評価」などの単一回答、「購入動機を3つまで回答してください」などの複数回答は、集計や分析がしやすいため、重点的に活用していることだろう。

回答者の立場で考えると、数量回答・単一回答・複数回答は、設問者からの問いかけに対し、返答があらかじめ用意されていることから、言わば消極的な回答と考えることができる。しかし、自由記述は、返答は回答者自らが考え出さなければならないことから、言わば積極的回答と考えることができる。積極的回答の方が回答者の負担が大きいことは、ご理解いただけるはずだ。

つまり、積極的回答の方が、より強く回答者の意向を記述していると考えられる。
しかし、積極的回答である自由記述の活用については、どのように活用してよいか頭を悩ませている人が多いと思う。

ここでは、自由記述から回答者のニーズを抽出する一つの方法をご紹介する。
その方法とは、「格」に注目することにより、ニーズをまとめて読み解く方法である。特に、ある程度量の多いデータに向く方法である。

自由記述を「格」に注目して分析するにあたり、次のツールを使用させていただいた。

まずは、「格」とは何かということを簡単にご説明する。

格とは

格について、Wikipediaを参照すると、次のように記載されている。

格とは、典型的には、名詞に付与されて、その名詞を含む句が持つ意味的・統語的な関係を示す標識の体系で、名詞の語形を決める文法範疇・素性の一つである。

換言すると、典型的な格とは、名詞の形を変えることによって、主語・目的語といった統語的関係や、行為の行なわれる場所・物体の所有者といった意味的関係をその名詞を含む句が持っていることを表すマークである。

非常に難解な説明となっているが、簡単言うと単語と単語がどのような接着剤でくっついてるのかを表したもの、ということである。

具体例を見るとわかりやすい。
例えば、「太郎は花子に本を渡した」を上記ツールで格解析すると、次のようになる。

用言 渡す
ガ格 太郎
ニ格 花子
ヲ格

この「ガ格」「ニ格」「ヲ格」が「渡す」の接着剤となっている。
つまり、「太郎は花子に本を渡した」を次のように分解できる。

ガ格 太郎 ガ 渡す
ニ格 花子 ニ 渡す
ヲ格 本 ヲ 渡す

ここで大切なことは、単一の接着剤ではなく、接着剤には種類があるということである。
そして、この接着剤の種類に注目すると、非常に重要な言い換えを行うことができる。

問いに変換

先ほどの例「太郎は花子に本を渡した」に対して、「ガ格」の「太郎 ガ 渡す」に着目してみる。
このとき、太郎を「誰」に変換し、最後に「?」をつけてみると、「誰 ガ 渡す?」となり、問いに変換でき、その回答が「太郎」となるのである。同様に他の格についても問いに変換すると、次のようになる。

ガ格 誰 ガ 渡す? 太郎
ニ格 誰 ニ 渡す? 花子
ヲ格 何 ヲ 渡す?

このように、格を用いると、「渡す」という行為を目的別に分類して表示することができるのである。
今は「太郎は花子に本を渡した」という一文のみを考えたが、もっと文章量が多い場合を考えてみてほしい。
例えば、「渡す」の「ヲ格」に対する「何 ヲ 渡す?」に対して、「本」が5回、「ペン」が20回出現していた場合、「渡す」という行為に対して、「ペン」の方が「本」より重要視されている傾向があると読み解くことができる。
また、「渡す」よりも「借りる」の方がより出現していた場合、「何 ヲ 借りる?」と比較することで、具体的な物のやり取りをイメージしやすくなる。

具体例

最後に一つ具体例をみてみる。データとして、「第2回 「金沢の観光について」の調査結果について」の「問12 金沢市の観光について、ご意見等ありましたらご自由にご記入ください。」を使用させていただいた。

この自由記述に対して、上記の方法で格による問いを作成し、いくつかピックアップすると次のようなる。次の表内のカッコ()内の数字は、出現頻度である。
ただし、データのクレンジングは一切行っていない。実際にこの方法を使用する場合は、データのクレンジングは非常に重要な作業となる。

何 ヲ してほしい?(6) アナウンス(1),イベント(1),働きかけ(1),整備(1),積極的PR(1),街づくり(1)
何 ガ 不足?(5) おもてなし感(1),地物(1),宿泊施設(1),炭火焼(1),駐車場(1)
何 ヲ 心掛ける?(4) マナー向上(1),対応(1),工夫(1),気さくさ(1)

「何 ヲ してほしい?」をみると、PRに対する回答が多いということが分かる。また、「何 が 不足?」をみると、宿泊施設や駐車場など受入施設に懸念を抱えているようだ。

このように、この方法を使うと、非常に活用しやすい形で自由記述を要約できるのである。

まとめ

積極的回答である自由記述に対して、格に着目することで問いに変換し、より活用しやすい形で要約できることをみてきた。

実際にこの方法を用いるためには、上記で記載したツールを使用してプログラミングを行う必要があるため、簡単に実行できるとは言い難いが、大量の自由記述に対して、要約を行ったり、そこから活用を見出すよりは、労力は少なくて済むだろう。

この情報が少しでもあなたのお役に立てたなら幸いだ。

参考文献

この文章を書くにあたり、次の書籍を参考にさせていただいた。
テキストマイニングの基礎的なことから応用事例(「格」から「問い」に変換するアイディアなど)まで分かりやすく記載してあるので、テキストに対して何かしら示唆を得たい場合には大変参考になる。

  • 松村真宏・三浦麻子(2014)『人文・社会科学のためのテキストマイニング[改訂新版]』誠信書房

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