RFM分析とは、ある一定期間の購買履歴データを用いて、顧客を分類することにより様々な示唆を得るための分析手法である。分類の仕方は、顧客を直近購買時期・購入頻度・購買額の3つの軸で分類し、各軸ごとにランク分けをする。このことにより、顧客が現在どの位置にいて、それがどのくらいの人数なのかを把握することができる。

あなたは、このような分類をすることにどのようなメリットがあるのか疑問に感じるかもしれないので、簡単にご説明しよう。

まず、優良顧客の定義をはっきりさせることができる。例えば、あなたが経営者で部下に優良顧客に対して商品購入後の聞き取りをするように命令したとしよう。すると部下はどう行動するだろうか。当然、命令されたことは遂行するだろうが、おそらく、部下個人の考える優良顧客に対して聞き取りをするに違いない。つまり、部下にとっての優良顧客は聞き取りやすい顧客という間違ったことになりかねない。これでは、あなたが望む情報が得られない。意思疎通という観点から、言葉の定義をはっきりとしておくことは非常に重要だ。

このようにして、顧客に対する定義をはっきりさせることができると、顧客層ごとに異なるサービスを展開することができる。例えば、優良顧客には他と違う特別感を与えるようなサービスを提供し、非優良顧客には割引サービスを提供するなどだ。

ここで、あなたはこのように顧客ごとにサービス内容を変えるのは不平等と思うかもしれない。しかし、顧客の立場からよく考えてみてほしい。利用頻度、購入額が高い人からしてみれば、大して利用もせず、購入額が低い人と同じサービスというのは不公平に感じないだろうか。また、経営の面から考えても、あなたの事業の売上に最も貢献しているリピーター顧客を大切にするということは経営の安定化を図るうえでとても大事なことだ。

そして何よりも重要な事は、効果を検証でき次の打ち手の示唆を得ることである。例えば、割引キャンペーンの葉書を送った結果、直近で購買しておらず、購入頻度も低く、購入額も低い顧客層の反応率が他の顧客層よりも著しく悪かったとしよう。その場合、次回は葉書の内容やデザインなどを一新するという対策も考えられるが、思い切って葉書を送らないということもできる。つまり、販促コストの最小化を図ることができるということだ。

また、葉書を送らない分の浮いたコストは他の反応率の良かった顧客層にまわすという対策を講じる事も可能だ。この場合は、割引キャンペーンの効果の最大化を図ることができるということだ。

このように、RFM分析は使い方次第で、非常に有効なツールとなるのだ。すこし前置きが長くなってしまったが、ここからは実際にRFM分析について見ていこう。

ちなみにRFM分析のRFMとは、以下の頭文字をとったものであることを補足として付け加えておく。

  • Recency:直近購買日
  • Frequency:購入頻度
  • Monetary:購買額

RFM分析の準備

RFM分析においては、まず分類する基準を作るところから始める。ここでは、顧客を以下の表のように分類したとする。ランクが高い程、優良顧客となるようにしておく。

ランク R(直近購買日) F(購入頻度) M(購買額)
3 1週間以内 10回以上 10万円超
2 1週間超~4週間以内 5回以上~10回未満 5万円以上~10万円未満
1 4週間超~ 5回未満 5万円未満

この基準を元に顧客を「R(直近購買日)」「F(購入頻度)」「M(購買額)」でランク分けすると、以下のような表ができる。

顧客 R(直近購買日) F(購入頻度) M(購買額) 合計ランク
ID00001 3 3 3 9
ID00002 3 2 2 7
ID00003 2 3 1 6
ID00004 3 2 3 8
ID00005 1 2 2 5
ID00006 1 1 1 3
ID00007 2 2 2 6
ID00008 2 1 3 6
ID00009 2 3 3 8

そして、次に、クロス集計表を作成しよう。例えば「R(直近購買日)」と「F(購入頻度)」でクロス集計表を作成すると、以下のようになったとする。

F(購入頻度) 合計
ランク3 ランク2 ランク1
R(直近購買日) ランク3 10人 25人 15人 50人
ランク2 20人 30人 50人 100人
ランク1 20人 45人 85人 150人
合計 50人 100人 150人 300人

他にも、「R(直近購買日)」と「M(購買額)」や「F(購入頻度)」と「M(購買額)」などでクロス集計表を作成しよう。

分類数の決め方

それでは、いくつで分類すればよいのだろうか。分類の数により、

  • 3分類:3×3×3=27通り
  • 5分類:5×5×5=125通り
  • 7分類:7×7×7=343通り

のように通り数が決まるので、顧客数に準じて決めていけばよい。ここで、注意すべきことは、あまり細かく分類しても、意味がないということだ。
例えば、分類数を10とした場合、(R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))において、(10,10,10)と(10,10,9)が意味のある分類になっているのかしっかりと見極めないといけない。

分類の仕方

分類の仕方でオーソドックスなのは等分、つまり、各分類の要素数が等しく分ける方法であるが、これはあまり機能しない場合が多い。では、どうやって分類するのかというと、「R(直近購買日)」「F(購入頻度)」「M(購買額)」それぞれに対してヒストグラムを描いてみて決めるのが良い。ヒストグラムについては、「度数分布とヒストグラム」で解説しているので参考にして欲しい。

ランクの付け方

一般的に、3つに分類した場合は、ランクを「1,2,3」で割り当てる。しかし、業種、業界、商品によっては、「R(直近購買日)」「F(購入頻度)」「M(購買額)」のそれぞれを「1,2,3」のランクとしないほうがよい場合がある。例えば、F(購入頻度)がより重要となる場合は、重みをつけて「2,4,6」とするのが有効になる場合がある。

RFM分析の見方

それでは、RFM分析をどのように見ればよいか説明していく。顧客を「R(直近購買日)」「F(購入頻度)」「M(購買額)」それぞれ単体で見るよりは、それらを掛け合わせたもの、つまりクロス集計表で見ていくことが重要だ。ここでは、「R(直近購買日)」「F(購入頻度)」「M(購買額)」の3つを掛け合わせた一般的な見方を紹介する。

  • (R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))が(高,高、高)の場合
    このグループに属する顧客は優良なリピーターである。
    顧客が離反しないように、顧客維持していなかければならない。
  • (R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))が(高,高、低)の場合
    このグループに属する顧客は優良なリピーターであるが、購入額が少ない。
    1回あたりの購入額を高めることが課題となるため、上位製品を促したり、関連商品をお勧めするなどの対策が考えられる。
  • (R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))が(高,低、高)の場合
    このグループに属する顧客は、新規顧客または離反しかけている可能性のある顧客である。
    まずは、新規顧客か離反しかけているのかを突き止めよう。
    購入頻度を高めることが課題となるため、ポイントカードや割引クーポンの提供などの継続購入を促す対策が考えられる。
  • (R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))が(高,低、低)の場合
    このグループに属する顧客は、新規顧客または離反しかけている可能性のある顧客であり、購入額が少ない。
    対策は(高,高、低)または(高,低、高)の場合と同様と考えられる。
  • (R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))が(低,高、高)の場合
    このグループに属する顧客は、以前リピーターで離反しかけている可能性のある顧客である。引き戻すことが課題となるため、まずは原因を探るところから始めよう。
  • (R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))が(低,高、低)の場合
    このグループに属する顧客は、 以前リピーターで離反しかけている可能性のある顧客であり、購入額が少ない。
    R(直近購買日)の方がM(購買額)よりも優先度が高いため、まずは引き戻すために原因を探り対処しよう。
  • (R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))が(低,低、高)の場合
    このグループに属する顧客は、購買力のある一見の顧客である。
    再購買を促すためメールなどのメッセージを送るなどの対策が考えられる。
  • (R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))が(低,低、低)の場合
    このグループに属する顧客は、あまり魅力のない顧客である。
    上記に比べて対策の優先順位は低くてよいだろう。
    また、この顧客に対して営業を行っている場合は時間短縮などの削減が効果的かもしれない。

対策の優先順位

一般的には、合計ランクの高いランクから順に対策を施せばよい。つまり、まずは優良顧客の囲い込みから始めるということだ。

ここで、合計ランクが同じの場合を考えよう。例えば、(R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))が(1,1,3)と(2,2,1)の場合を考えてみる。(1,1,3)の顧客は一見の顧客である可能性が高いため、今後の再購買は難しいかもしれない。(2,2,1)の顧客は購入額は低いもののある程度リピートしてくれている。このように考えると、より接触機会の多い(2,2,1)の顧客の方が優先順位が高いかもしれない。

実際に優先順位を決めるときは、経営ノウハウなどを考慮して決めるしかない。

さらなる分析へ

発展形となる分析方法も紹介しておく。例えば、(R(直近購買日),F(購入頻度),M(購買額))が(高,高、高)である顧客に何か共通する特徴がないか調べてみよう。性別、年齢、住所、収入、職業、学歴、利用時間、曜日、天候、商品など様々な角度から調べてみる。
もし共通する要素が見つかれば、(高,高、高)以外の顧客を(高,高、高)へ促す糸口が見つかるかもしれない。

また、性別、年齢、住所、収入、職業、学歴、利用時間、曜日、天候、商品などある程度事前に絞った上でRFM分析を行ってみるのも面白い。このように分析すれば、例えば男女別に優良顧客の設定をすることができる。

まとめ

ここまでRFM分析を一通り見てきた。購買履歴データさえあれば、対して難しくない分析であることはお分かりいただけたと思う。にも関わらず、顧客に対して様々な示唆を与えてくれる分析である。もし、一度もRFM分析を行ったことがないのであれば、是非一度試してみることをお勧めする。

もちろん、RFM分析は一度行ったらよいというものではなく、定期的に分析するのが良い。なぜなら、RFM分析を元に行った対策の検証が容易に行えるからである。この対策が成功であれ、失敗であれ、経営ノウハウとして積み上がる。そうやって、少しずつでも着実に成功確率を上げていくのである。

経営戦略に使えるRFM分析の基礎知識と活用法